詐欺被害に遭ったらどうする?法的側面から見る刑事告訴と民事訴訟


「詐欺に遭ってしまった…」

その事実に気づいたとき、怒りや絶望、そして「どうすればお金を取り戻せるのか?」という切実な思いが込み上げてくることでしょう。詐欺被害からの回復には、精神的なケアはもちろんのこと、法的な手続きも非常に重要です。

ここでは、詐欺被害に遭った方が取るべき法的な手段として、「刑事告訴」と「民事訴訟」について、それぞれの目的や違い、注意点などを分かりやすく解説します。


1. 刑事告訴:犯人に「罪」を償わせるための手段

刑事告訴は、詐欺という犯罪行為を行った犯人を、警察や検察に捜査してもらい、刑事罰(懲役や罰金)を科してもらうことを求める手続きです。

目的と特徴

  • 目的: 犯人に詐欺罪という「罪」を償わせること。

  • 主体: 被害を受けた個人が、警察や検察に対して行います。

  • メリット:

    • 詐欺行為を働いた犯人が逮捕され、刑事裁判で有罪判決を受ければ、社会的な制裁が科されます。

    • 警察による捜査が開始されるため、犯人の特定や、被害の全容解明につながる可能性があります。

  • 注意点:

    • 刑事告訴は、お金の返済(被害回復)を直接目的とするものではありません。犯人が逮捕・起訴されても、被害額が戻ってくる保証はありません。

    • 告訴が受理され、捜査が進むまでには時間がかかります。

刑事告訴の流れ

  1. 証拠の収集: 詐欺被害の証拠(メール、振込記録、契約書など)をできる限り集めます。

  2. 警察への相談: まずは最寄りの警察署の生活安全課やサイバー犯罪相談窓口に被害届を提出し、相談します。

  3. 告訴状の提出: 警察や検察に告訴状を提出します。被害の事実を正確に伝え、告訴の意思を明確にします。

  4. 捜査の開始: 告訴が受理されると、警察が本格的な捜査を開始します。

  5. 犯人の逮捕・起訴: 捜査の結果、犯人が特定されれば逮捕、その後起訴され、刑事裁判へと進みます。


2. 民事訴訟:失ったお金を取り戻すための手段

民事訴訟は、詐欺行為によって生じた損害(被害額)を、犯人に賠償させることを目的とする手続きです。

目的と特徴

  • 目的: 被害額の返還(損害賠償)を求めること。

  • 主体: 被害を受けた個人が、加害者に対して行います。

  • メリット:

    • 裁判で勝訴すれば、加害者に金銭の支払いを命じる判決を得られます。

    • 刑事告訴と並行して進めることが可能です。

  • 注意点:

    • 訴訟費用(弁護士費用など)がかかります。

    • 相手に支払い能力がない場合、判決を得てもお金が戻ってこない可能性があります。

    • 弁護士に依頼しなければ、手続きが複雑で難航する場合があります。

民事訴訟の流れ

  1. 証拠の収集: 刑事告訴と同様に、詐欺被害を証明する証拠を徹底的に集めます。

  2. 内容証明郵便の送付: 弁護士に相談し、まず加害者に対して内容証明郵便で損害賠償請求を行います。

  3. 訴訟提起: 相手が支払いに応じない場合、裁判所に訴状を提出し、民事訴訟を提起します。

  4. 裁判の進行: 裁判では、お互いの主張をぶつけ合い、証拠をもとに審理が進められます。

  5. 判決・和解: 裁判所の判決や、和解によって解決します。


3. 刑事と民事、どちらを先に進めるべき?

多くの場合、まずは警察に被害届や告訴状を提出し、刑事事件として捜査を依頼するのが第一歩となります。なぜなら、刑事告訴によって犯人が特定されると、その情報が民事訴訟で非常に有利に働くからです。

また、刑事事件として立件されれば、加害者側が示談交渉に応じる可能性も高まり、結果的に被害回復につながることもあります。

ただし、詐欺の手口や被害額によっては、すぐに民事訴訟の準備を始めるべきケースもあります。専門的な判断が必要となるため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。


まとめ

詐欺被害は、決して泣き寝入りする必要はありません。

  • 犯人に罪を償わせたい: 刑事告訴

  • 失ったお金を取り戻したい: 民事訴訟

この二つの手段を理解し、状況に応じて適切に活用することが、被害からの回復への道を開きます。一人で抱え込まず、弁護士や警察、国民生活センターなど、専門家への相談をぜひ検討してみてください。

このブログの人気の投稿

建築基準法43条2項2号(但し書き道路)とは?分かりやすく解説!

【図解あり】インボイス制度で「内税」の請求書はどう書く?迷わない書き方を徹底解説

特殊詐欺の手口はなぜ巧妙化するのか?:進化する詐欺の背景と対策