落ちているツバメの雛を見つけたら?「拾ってはいけない」理由と生存率を上げるための正しい救護マニュアル


春から夏にかけて、軒先の巣からツバメの雛が地面に落ちているのを見かけることがあります。小さく震える姿を見ると、放っておけずに「助けてあげたい」と手を差し伸べたくなるのが人情です。

しかし、野鳥の世界には「拾ってはいけない」という重要なルールがあることをご存じでしょうか。良かれと思って保護したことが、結果的に雛の命を奪ったり、自然に帰るチャンスを奪ってしまったりすることもあるのです。

この記事では、落ちているツバメの雛を見つけた際に、私たちが取るべき「本当に正しい行動」をステップバイステップで詳しく解説します。


なぜ「拾ってはいけない」と言われるのか?

野鳥の雛を見つけた際、すぐに自宅に持ち帰ってはいけないのには、科学的・倫理的な理由があります。

1. 親鳥が近くで見守っている

地面に落ちている雛は、巣立ちの練習中に力尽きた「巣立ち雛」であるケースが多々あります。姿は見えなくても、親鳥は近くの電線や木の上から必ず見守っており、人間がいなくなれば餌を運びに来ます。人間が拾ってしまうと、親鳥からすれば「誘拐」されたのと同じ状態になってしまいます。

2. 人間の飼育下では生存率が下がる

ツバメの雛は、1日に数百回という頻度で親鳥から新鮮な昆虫を与えられます。人間が人工飼料で育てるのは非常に難しく、栄養バランスの偏りから骨折したり、羽が正常に生えなかったりするリスクが高まります。

3. 自然のルールと法律

日本の「鳥獣保護管理法」では、原則として野鳥を許可なく捕獲・飼育することは禁止されています。一時的な救護であっても、基本は「自然のまま」が推奨されています。


状況別:ツバメの雛を救うための正しい判断基準

雛の状態を冷静に観察し、以下のフローに沿って対応を決めましょう。

ケースA:羽が生え揃っており、元気な場合(巣立ち雛)

それは誘拐ではありません。近くに親鳥がいる可能性が極めて高いため、**「何もしない」**のが正解です。猫やカラスなどの天敵が心配な場合は、近くの木の枝や、少し高い段差に乗せてあげて、速やかにその場を離れましょう。

ケースB:まだ羽が産毛で、裸に近い場合(落巣雛)

何らかの拍子に巣から落ちてしまった赤ちゃんです。このままでは体温が奪われ、命に関わります。

  • 対処法: 可能であれば、元の巣にそっと戻してあげてください。「人間の匂いがつくと親が見捨てる」という説は、鳥の嗅覚が発達していないため心配ありません。

ケースC:巣が高すぎて戻せない、または巣が壊れている場合

「代わりの巣」を作ってあげましょう。

  • 代用巣の作り方: カップ麺の容器や小さなザルにティッシュを敷き、元の巣に近い場所にガムテープなどで固定します。そこに雛を入れておけば、親鳥が気づいて給餌を再開してくれます。


怪我をしている、弱っている時の緊急救護マニュアル

もし雛が怪我をしていたり、ぐったりして動かなかったりする場合は、緊急の保護が必要になることがあります。

  1. 保温する: 雛にとって冷えは最大の敵です。段ボール箱にタオルを敷き、カイロやペットボトルにお湯を入れたもので、箱全体を30度前後に温めます。

  2. 暗く静かな場所に置く: 雛は極度のパニック状態にあります。覗き込んだり触ったりせず、静かな部屋に安置しましょう。

  3. 水や餌を無理に与えない: 弱っている雛に無理やり水を与えると、気管に入って窒息死する恐れがあります。まずは保温に徹してください。

  4. 専門機関に相談する: 各都道府県の「野鳥担当窓口(環境保護課など)」や、野生動物を受け入れている獣医師に連絡し、指示を仰ぎましょう。


ツバメの生存率を上げるために私たちができること

雛が落ちてしまう背景には、天敵の襲撃や、近年の住宅建材の変化(巣が滑り落ちやすい壁など)があります。

  • カラス対策: 巣の周囲に細いテグスを垂らすことで、カラスの侵入を防げます。

  • 落下防止: 巣が作られ始めた段階で、下に小さな棚(フン受け兼落下防止台)を設置しておくと、雛が落ちても地面まで転落するのを防げます。


まとめ:優しさとは「見守る勇気」を持つこと

落ちている雛を見つけたとき、一番大切なのは「人間が親代わりになること」ではなく「親鳥に子育てを返してあげること」です。

一見、冷たく見える「放置」という選択も、野鳥の生態を理解した上での深い愛情に基づいた行動と言えます。どうしても心配なときは、遠くから双眼鏡などで様子を伺い、親鳥が戻ってくるのを確認してあげてください。

自然の厳しさと向き合いながら懸命に生きるツバメたち。正しい知識を持って接することで、一羽でも多くの雛が青空へ羽ばたけるよう、温かく見守っていきましょう。


幸せを運ぶツバメが巣を作ったら?縁起が良い理由と温かく見守るための完全ガイド