不動産業界用語の「天ぷら」ってナニ?その裏側と注意点
不動産の売買や賃貸に関わる中で、耳慣れない業界用語に出くわすことがありますよね。その中でも、ちょっとユニークな響きを持つのが「天ぷら」という言葉。美味しい揚げ物を想像するかもしれませんが、不動産業界では全く異なる、そして少し残念な意味合いで使われているんです。
今回は、この不動産業界の「天ぷら」が一体何を指すのか、なぜそのような行為が行われるのか、そしてそれがどんな問題を引き起こすのかを、分かりやすく解説していきます。
不動産業界の「天ぷら」の正体とは?
不動産業界で「天ぷら」という言葉が使われる場合、主に以下の二つの意味があります。
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架空の契約や、キャンセル前提の契約を結ぶこと
これが最も一般的な「天ぷら」の意味合いです。不動産会社の営業マンが、社内の厳しいノルマ達成のために、実際には存在しない(架空の)契約をでっち上げたり、最初からキャンセルになることを前提として、一時的に契約を締結する行為を指します。
「契約を上げる(揚げる)」という言葉と、衣で中身がよく見えない「天ぷら」のイメージを重ねて使われている、という説もあります。
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物件の案内を装ってサボること
こちらはやや派生的な意味ですが、実際には顧客との物件案内が入っていないのに、あたかも案内があるかのように見せかけて会社を抜け出し、時間をつぶす行為を指すこともあります。
どちらのケースも、偽りやごまかしが含まれているのが共通点ですね。
なぜ「天ぷら」が行われるの?その背景と問題点
「天ぷら」が行われる背景には、不動産業界特有の厳しい営業ノルマが深く関係しています。
ノルマ達成のための「苦肉の策」?
多くの不動産会社では、月ごとや四半期ごとに、営業マンに厳しい契約件数や売上目標が課せられます。このノルマを達成できないと、評価が下がったり、時にはペナルティが課されたりすることもあります。
そのため、追い詰められた営業マンが、一時的にでもノルマをクリアしたように見せかけるために、「天ぷら」に手を出してしまう、というのが実情です。架空の契約を結んでおいて、後日「お客様のローン審査が通らなかった」「条件が合わなかった」などの理由をつけてキャンセル手続きをする、という流れが多いようです。
「天ぷら」が引き起こす問題点
「天ぷら」は、会社や顧客、そして営業マン自身にも、様々な良くない影響を及ぼします。
- 会社の正確な業績が見えなくなる: 架空の契約が含まれることで、会社全体の契約件数や売上データが水増しされ、実態とかけ離れてしまいます。これでは、正確な経営判断ができなくなります。
- 時間の無駄: 架空の契約のために書類を作成したり、キャンセル処理をしたりする時間は、本来なら真剣な顧客対応や新しい営業活動に充てられるべきものです。結果的に、会社全体の生産性を低下させます。
- 顧客への不利益: 「天ぷら」自体が直接顧客に被害を与えることは少ないかもしれませんが、こうした行為を行う営業マンや会社は、往々にして顧客の利益よりも自社の利益(または営業マン個人のノルマ)を優先する傾向があるかもしれません。結果として、顧客への対応が不誠実になったり、最適な物件情報が提供されなかったりするリスクが考えられます。
- 営業マン自身の成長阻害: 一時的にノルマをクリアできても、実力で契約を取る経験が積めないため、営業マン自身のスキルアップにはつながりません。長期的にはキャリアに悪影響を及ぼす可能性が高いです。
- 業界全体の信頼低下: 不正直な行為は、不動産業界全体の信頼を損ねることにつながります。
不動産取引で知っておきたい関連用語
「天ぷら」以外にも、不動産取引には専門用語や、時に注意が必要な慣行に関わる言葉があります。
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囲い込み(かこいこみ)
不動産会社が売主から売却の依頼を受けた物件情報を、他の不動産会社に紹介せず、自社だけで買主を見つけようとする行為。これは、売主にとっては売却機会が狭まり、高く売れるチャンスを失う可能性があるため、問題視されることがあります。不動産会社が売主・買主双方から手数料を得る「両手取引」を狙って行われることが多いです。
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両手取引(りょうてとりひき)
一つの不動産取引(売買や賃貸)において、一つの不動産会社が売主と買主(または貸主と借主)双方の仲介を行い、両方から仲介手数料を得ること。両手取引自体は違法ではありませんが、一部の「囲い込み」といった不適切な行為と結びつく場合があるため、注意が必要です。
まとめ:健全な不動産取引のために
不動産業界における「天ぷら」は、架空の契約やキャンセル前提の契約を意味する、不誠実な行為です。厳しいノルマが背景にあるとはいえ、会社や顧客、そして営業マン自身にとっても、決して良い影響は与えません。
私たちが不動産取引をする際には、直接「天ぷら」に遭遇することは稀かもしれませんが、常に透明性のある誠実な対応をしてくれる不動産会社を選ぶことが大切です。分からないことや疑問に思うことがあれば、遠慮なく質問し、納得した上で手続きを進めるようにしましょう。